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『暁のファーストフライト』 クリス・クレアモント

2002年07月28日

 新任の女性少尉ニコルは、ラグランジュポイントの一つL5で同期のポールと共にシミュレーターによる訓練を受けた。責任放棄とも取れる行動から地球へ送り返されるところだったが、何故か月基地に連れて行かれ新しい任務を命じられた。超光速の宇宙船が開発され近距離の恒星系とも行き来する時代であったが、かえって低速の宇宙船が必要な太陽系外惑星航路は整備が進んでいないため、宙賊と呼ばれる海賊が暗躍していた。作戦全体の責任者は別にいるがニコルは宇宙船の指揮責任者に命じられ、宇宙船ワンダラーに乗って旅立ったが・・・。

 解説で80年代の作品であるウィリアム・ギブスンの「クローム襲撃」がチャレンジャーの事故に触れていないから古びてしまったと言ったブルース・スターリングの話を書いていたけれど、この本さえ「ソビエト」から派遣された宇宙船乗りが出てきて、自分たちが暮らしている現代の先にこの話のようなことが現実に起こるという感じが薄れてしまっている。で、作り事のイメージが強すぎて面白さが半減。星新一さんみたいに時代を感じさせる言葉を極力方向とは違うのはあたりまえだけれど、現代の用語を未来にそのまま適用すると失敗してしまう見本かもしれない。ボーイング777がマッハ4・乗客600名の超音速機として登場してるけれど、同じ名前で今飛んでるのは音速以下の旅客機。下手に名前を使うとせっかくの雰囲気が台無しになる見本。
 それに新人を古参のパイロットがいるにしてもいきなり責任者にしてしまうのは強引過ぎて現実味が感じられないし、危険な地域へ飛ぶのにそんな宇宙船には乗りたくないなあ。零細企業がするんなら人手不足とかそれなりの言い訳が立つんだけど、軍隊ならそんな危ない人選をするとは思えない。
 『暁のファーストフライト』 クリス・クレアモント
    発行1990年04月30日
 (早川書房、文庫、ISBN4-15-010865-X 本体544円+税)