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『オルファクトグラム』 井上 夢人

2003年01月22日

 片桐稔は出来上がったばかりのバンド自主制作のCDを持って応援してくれる姉の元へ向かった。玄関でベルを鳴らしても声をかけても返事がない。玄関が開いていたので入っていくと、靴跡らしい妙な汚れ。恐る恐るあとを追って二階へ上がったが、やがて暗闇が訪れる。
 病院で目を覚ましたが、なぜか風景に妙な色がついている。何故か今まで臭いとして感じていたものが、視覚に近い感じで見えたのだった。

 名前は以前から知っているものの、この作家の作品は今回が初めて。新書で650ページにもなる分厚い本ですが、すんなり作品世界に入っていけて楽しめました。内容的には重い部分もあるけれど、臭いが見えるというアイデアが秀逸。WOWOWでドラマ化されたそうですが、WOWOWは契約を打ち切ってしまったのでもう見られない。監督も小中和哉さんだし見てみたい。
 『オルファクトグラム』 井上 夢人
      発行2001年12月05日
  (講談社、新書、ISBN4-06-182223-3 本体1600円+税)